2005年11月29日

「神々の山嶺」 夢枕獏 4.0

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 厚くて熱い、山岳小説の決定版である。作家についての好き嫌いは当然あるだろうが、もしこの作家が嫌いでも(ワタシはそうだ)、本作は手に取ってみて損は無い。謎解き、冒険、恋愛、友情、スリル、ロマン、エトセトラがてんこ盛りの、一大長編傑作エンターテイメントである。もし山岳小説を一冊だけと言われれば、迷うことなく本作をお薦めする。

 本作の登場人物には、モデルとなるクライマーが実在する(した)。羽生は森田勝であり、長谷は長谷川恒男である。これはもう、ちょっと日本登山史を知っていれば明らかなことで、森田のK2途中下山事件や、長谷川の滝沢第2スラブ「第二登おめでとう」の件も、ほぼそのまま小説中に取り入れられている。うむむ、この辺の話は半ば伝説化していてヒジョーに面白く、語り出すと止まらなくなってしまう。

 まあ、あんまりマニアックな話をしてもアレだし、と言ってストーリーを説明するのも野暮だ。著作権に引っ掛からない(か?)範囲で、最も印象的な、羽生の最期の手記を引用する。

 あしが動かなければ手であるけ。
 てがうごかなければゆびでゆけ。
 ゆびがうごかなければ歯で雪をゆきをかみながらあるけ。
 はもだめになったら、目であるけ。
 目でゆけ。
 目でゆくんだ。
 めでにらみながらめであるけ。

 めでもだめだったら
 それでもなんでもかんでもどうしようもなくなったら
 ほんとうにほんとうのほんとうにどうしようもなくなったら
 ほんとうにもううごけなくなってうごけなくなったら−

 思え。
 ありったけのこころでおもえ。



 かつて心に狼を飼ったことのある人ならば、ここはもう何の抵抗も躊躇もなく、ただ泣いて良いところである。「狼は帰らず」、である。

森田勝、長谷川恒男に興味があれば
以下のノンフィクションも楽しめることでしょう。

狼は帰らず−アルピニスト・森田勝の生と死
長谷川恒男 虚空の登攀者

両方とも著者佐瀬稔、中公文庫
posted by オヤヂ | 東京 霧 | Comment(4) | TrackBack(2) | ▲山/岩系
この記事へのコメント
はじめまして。
「神々の〜」で検索していて辿り着きました。
登場人物にはモデルがいるんですか!
わたしは登山関係はまったくうといので、初めて知りました。
でも確かに、参考文献のところに森田さんの著書がありますね。
こういう世界がほんとにあるんですね・・・
すごいです!
TBさせていただきますね。
Posted by けい at 2005年12月09日 23:14
はじめまして、私もやっと読むことができました。
登山小説は初めてでしたが、とっても面白く読むことが出来ました。
登山小説を読み漁って行きたくなっちゃいました。
またお勧めの本があったら紹介して下さい。
Posted by 株なでしこ at 2008年09月06日 20:48
はじめまして、私もやっと読むことができました。
登山小説は初めてでしたが、とっても面白く読むことが出来ました。
登山小説を読み漁って行きたくなっちゃいました。
またお勧めの本があったら紹介して下さい。
Posted by 株なでしこ at 2008年09月06日 20:48
株なでしこ様
コメント有難う御座いました。

この本が人々を感動させるとしたら、それは単に世界一の高峰への挑戦ということではなく、自己の限界を押し上げようとする、その馬鹿みたいに一途な「心意気」にあるのだろうと思います。

次はこの小説のモデルとなった二人の実話を読んでみてください。
Posted by オヤヂ at 2008年10月17日 01:20
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